2026年5月1日、自分は20年勤めた電気工事会社を辞めて、DDK合同会社を本業として動かし始めました。
と書くと「いきなり辞めて飛び出した人」みたいに見えるかもしれませんが、実はそうではないんです。会社は2023年8月2日に副業で作ってあって、そこから約2年9ヶ月、本業の現場代理人をやりながら、ゆっくり育ててきた箱なんです。
この記事は、その助走期間に何を考えて、何をやって、どう独立を決めたのか。同じように「いつか独立したい」と考えてる現場代理人さんや、建設業の同業の方に向けて、判断軸も工程も全部オープンに書きます。
- サブコン下請の現場代理人が、副業で合同会社を作るとどう動けるか
- 建設業許可なしで、業法に違反せずに副業を回す方法
- 助走期間に積み上げておいてよかったこと
- 本業独立に踏み切る判断軸(年齢・資格・市場・家族)
CHAPTER 12023年8月、副業で合同会社を作った理由
会社を作る前、自分はずっと電気工事のサブコン下請の現場代理人として動いてました。元請の協力会社の立場で、3次下請メインのポジション。施工管理・電気工事・建築設備CADでの図面作成まで一通り、20年やってきました。
1級電気工事施工管理技士は3度目の正直で2020年に合格してて、それを境に「現場代理人として任される現場の規模」が一気に広がりました。1級が手元にあって、第一種電気工事士の免状もある。20代後半から地道に積み上げてきた資格セットが、ある時から「**いつ独立してもおかしくない状態**」を作ってくれてたんです。
そんな中で強くなってきたのが、「現場の道具をデジタルで軽くしたい」という気持ちでした。
具体的に何が引っかかってたかというと、早見表問題です。電線サイズの選定、ブレーカー容量の選定、配管・ラックの選定、照度計算。これらの早見表は、自分が勤めてた会社の事務所のデスクトップパソコンに、Excelファイルとして入ってました。あるにはあるんやけど、これがまた「現場で必要なときに、スマホで開けない」。事務所まで戻ってPCで開かんと参照できへんから、現場ではほぼ使われてない、というやつ。
現場で「この電線サイズ、これでええんやっけ?」と確認したい瞬間って、めっちゃあるんです。やけど、Excelをスマホで開いてもレイアウト崩れて読みづらいし、そもそも事務所のパソコンに入ってるファイルは現場のスマホからは見れない。
「**現場で、スマホで、会員登録なしで、無料で、パッと参照できる早見表**」が世の中にあれば絶対便利やのに、自分が探した範囲では見つからん。「自分で作ったらええんちゃうか」と思い始めたのが、ちょうど合同会社設立の前の年くらいでした。
2023年8月2日、まずは「将来の選択肢を残すための箱」として、DDK合同会社(Digital Design Knowledge)を静かに設立しました。この時点では独立の具体プランがあったわけじゃなく、「いつかこの箱を活かす日が来るかもしれん」くらいの気持ちです。社名の「Digital Design Knowledge」には、デジタルで、設計の知識を、現場に届けるという意味を込めてます。
CHAPTER 2副業期間中、何をやっていたか
この助走期間にやっていたことは、大きく3つです。
① 役員報酬ゼロで運営(社保適法)
副業期間中、自分はDDKからの役員報酬をゼロで運営してました。役員報酬がゼロなら社会保険の加入義務は発生しません。本業の会社で社保加入済みの状態のまま、副業の合同会社は「箱だけ持ってる」状態で適法に動かせる、というのがポイントです。
第1期・第2期・第3期と決算もちゃんと回して、第3期まで完了済み。社保の話は別記事「1人合同会社の社会保険」で詳しく書いてるので、気になる方はそちらも見てください。
② 本業の現場代理人として現役で稼働
副業中も、本業はずっと現場でした。サブコン下請の立場で、施工管理・電気工事・図面作成と、現役で動いてました。「現場感覚を絶対に錆びさせない」という意識は強く持ってました。机上で考えた人の話って、現場の人には一発で見抜かれます。独立後にツールを使ってもらうにしても、現役の現場感が言葉の端々に出るかどうかで信頼度が全然変わるな、と思ってました。
③ 業界向けの無料Webツールを、合間にコツコツ設計
本業の現場代理人としての仕事を最優先に置きつつ、業界全体に役立ちそうな無料Webツールの設計・プロトタイプを、空いた時間にコツコツ進めてました。業務時間中の作業ではなく、本業の業務範囲とも被らない、自分の経験を社会に還元するための個人活動として動かしてた、というのが正直なところです。
方向性ははっきりしてました:
- 会員登録なしで使える
- スマホ対応で、現場で開ける
- 無料で公開する
- 電線・ブレーカー・配管・照度・歩掛りなど、現場で本当に使うものに絞る
合同会社を作って以降、進めてたのは「設計・プロトタイプ・検証」の段階。本格公開は独立を機にやろうと決めてて、独立後に ddkcad.com でツール群を本格公開していく、という構想でした。実際の公開ラインナップは電気工事の現場で本当に役立つWebツール20選にまとめてます。
CHAPTER 3「副業」と「本業」の線引きを、どう守ったか
ここ、独立志望の同業の方に一番伝えたい部分です。
副業期間中、自分は建設工事の請負実績ゼロで運用してました。なんでかというと、建設業許可を取ってない状態で500万円以上の電気工事を請け負うのは違法だからです(軽微な工事の例外もありますが、これも金額・工種で要件が決まってます)。
「合同会社を作ったから、副業で電気工事の仕事を取って稼ぐぞ」と勢いで動くと、ここでアウトになる人が出ます。許可なしの建設工事請負は、本人にも元請にも迷惑がかかるやつ。
DDKが副業期間中にやってた業務
建設業法上の「建設工事」に該当しない範囲で、こんな動きをしてました:
- 図面作成の応援(CAD作業のみ。施工なし)
- 現場確認・状況調査(写真・動画で報告書作成)
- 照度測定・絶縁抵抗測定など、測定業務
- Webツールの設計・プロトタイプ開発
- 電気設計の相談対応
これらは建設業法上の「建設工事」には該当しません。図面作成は設計補助業務、測定は調査業務、ツール開発はソフトウェア業、相談はコンサル業。建設業許可がなくてもやれる範囲です。
「いやそれ、ややこしすぎひん?」と思う方もいるかもしれません。やけど、ここをちゃんと整理しとかんと、後で建設業許可を取るときに大変なことになるんです。許可申請には経営業務管理責任者要件(経管)っていうのがあって、過去の実績の見せ方を間違えると申請が通らんようになります。
自分の場合、本業のほうで電気工事会社の取締役として5年以上経営に関わってきた実績があったので、経管要件はクリア済み。副業のDDKは「箱として静かに育てて、本業に切り替えたタイミングで建設業許可を取る」という前提で最初から設計してました。
CHAPTER 4独立を決めたタイミングと、判断軸
2026年に入って、独立のタイミングを真剣に考えるようになりました。判断軸はざっとこんな感じです。
① 年齢と体力
現場代理人って、デスクワークだけやなくて現場での立ち回りも必要です。脚立に登る職人さんの動きを把握して、重い盤を運ぶときの段取りを組んで、狭い天井裏の状況を確認して。体が動くうちにしか取れない選択肢って、絶対あるんです。「あと10年経ってからでええわ」と先延ばしすると、現場対応ができる独立社長になりにくくなります。
② 資格と経験の充足
電気工事業で独立するために必要な資格セットは、ある程度はっきりしてます:
- 第一種電気工事士(高圧6,600Vまで対応可能)
- 1級電気工事施工管理技士(大型工事の監理技術者・主任技術者の要件をクリア)
- 現場経験(建設業許可の経管要件・専任技術者要件のクリア)
このセット、自分は全部揃ってました。経験も20年。資格・経験の積み上げの話は電気工事士になるには?1種・2種の違いや監理技術者と主任技術者の違いに書いてるので、興味あれば読んでみてください。
③ 副業期間で「箱の運用」に慣れた
副業期間中、ゆっくりやけど決算3期分を回してきました。法人税・住民税の申告、税理士さんとのやり取り、会計ソフトの扱い。「合同会社を運営するってこういうことか」っていう感覚が、本業の傍らで身についてました。これは独立直後の動きの速さに直結します。
④ 家族の合意
これ、めちゃくちゃ大事です。独立直後は収入が読みにくい時期もあるんで、家族の理解がないと続きません。自分の場合は、副業期間中から家族と何度も話して、独立後の生活設計まで含めて合意済みでした。
⑤ 市場のタイミング
電気工事業界、人手不足です。特に1級電気工事施工管理技士は完全に売り手市場。元請の協力会社としてやってきた実績があれば、独立しても声をかけてもらえる先はあります。「人がおらん業界で独立する」のは、追い風が強くて有利なんです。
CHAPTER 52026年4月30日、退職の日
退職日は2026年4月30日。20年お世話になった会社を、節目で離れる日でした。
正直、ここまで長く勤められたのは、上司・同僚・元請・職人さんに恵まれたからです。20年という時間は、感謝の言葉だけで語り切れないくらい長い時間でした。感謝しかないんです、ほんま。
退職の意向を伝えてから最終日までのあいだ、引き継ぎだけは絶対に手を抜かんように、と決めてました。抱えてた現場の図面・進捗・関係先連絡を、全部書面化して渡す。「現場で困らんように」だけは絶対守りたかった部分です。20年お世話になった会社を出るんやから、最後の最後まで、現場代理人として責任を果たしたつもりです。
CHAPTER 62026年5月1日、本業独立
2026年5月1日、DDK合同会社を本業として動かす1日目です。
といっても、独立初日に劇的な変化があるわけじゃないです。役員報酬を取る体制へ切り替え、社会保険の加入手続きを進め、建設業許可申請の準備を本格的にスタート。粛々と「箱を本業仕様に切り替える」作業の日々でした。
独立初日の朝、自分の中で一番強かったのは「やっと始まった」という感覚でした。2023年8月2日に箱を作ってから、ここまでの準備期間。長いと言えば長いし、振り返ってみたら一瞬とも言えます。
20年の現場経験に加えて、自分名義の合同会社で静かに積み上げてきた「決算3期分の運用実績」と「設計済みのWebツール群」。「ゼロから始める独立」ではなかったことは、めちゃくちゃ大きい支えになってます。
CHAPTER 7独立直後にやったこと
独立して最初の1週間でやったことは、こんな感じです。
① 元請・お世話になった先への挨拶
2026年5月7日、お世話になってきた元請の担当者の方々と、長年お付き合いのあった業界の先輩に、独立報告のメールを送りました。「前職を退職してDDK合同会社として独立しました」「今後もご一緒できることがあれば、ぜひお願いします」という内容です。
返信は想像以上に好意的でした。「楽しみにしてる」「またご一緒したい」という言葉をもらえた時、日々の現場で20年積み上げてきたものは本物やったんやな、と心から思いました。
② 社会保険の加入
役員報酬を取る体制に切り替えるタイミングで、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が必要になります。1人会社でも、GビズIDと e-Gov 電子申請を使えば社労士なしで自分で届出できます。実際の手続き内容は1人合同会社の社会保険のリアルにまとめてます。
③ 建設業許可申請の準備+Webツールの本格公開
本業として電気工事を請け負うなら、建設業許可は絶対に取らなアカン。経管要件・専任技術者要件は満たしてるので、あとは申請書類の準備です。これも自分で進めてます。
並行して、これまで設計してきたWebツール群を、ddkcad.com で本格公開する作業もスタート。独立を機に、「自分で作って、みんなに使ってもらおう」のフェーズに入った感じです。
CHAPTER 8これから独立を考えてる方へ伝えたいこと
自分の体験を踏まえて、これから独立を考えてる同業の方(現場代理人さん・施工管理担当の方・職人さん)に伝えたいことは3つです。
① いきなり辞めるより、自分名義の「箱」を持っておくと選択肢が広がる
合同会社の設立は、登録免許税6万円。自分はネット完結の電子定款作成代行サービスを使いました。フォームに必要事項を入力したら、電子署名(電子印)入りの定款データがメールで届くので、それを自分でCD-Rに焼いて法務局へ持参。合同会社は株式会社と違って公証人による定款認証も不要やし、電子定款なら印紙税4万円も不要。代行サービスは数千円〜1万円弱で見つかります。自分名義の法人を持っておくと、いざ独立を考えたタイミングで動きが早くなります。決算を回す経験も、独立前に積んでおけると、独立直後にバタつかずに済みます。
② 副業期間中、建設業法は絶対に守る
建設業許可なしで500万円以上の電気工事の請負はNG。これは現場の話じゃなくて、法律の話です。図面作成・調査業務・測定業務・ソフトウェア開発あたりで、業法に抵触しない範囲で動かしましょう。後で許可を取るとき、経管要件や実績の整理がスムーズに進みます。
③ 信頼関係を絶対に切らさない
独立して一番効くのは、独立を意識し始めてからの動きやなく、20年かけて積み上げてきた信頼関係です。日々の現場での姿勢、関わってきた職人さん・同僚・お世話になった方々への向き合い方、節目での挨拶。これら全部、独立後の仕事につながります。「現場の信頼は一日にして成らず」。これは20年やってきて、ほんまにそうやな、と思います。
まとめ:副業から本業へ、線でつなぐ独立
2023年8月の合同会社設立から、2026年5月の本業独立まで。2年9ヶ月の副業期間は、決して回り道ではありませんでした。むしろ「いきなり辞める」より圧倒的に安全で、しかも独立直後の動きが速い。これが副業からの本業独立のメリットです。
建設業界の現場代理人として独立する話って、世の中の情報があまり多くないジャンルやと思います。だからこそ、自分の体験を一例として残しておくのは意味があるかな、と思って今回書きました。
もし「独立を考えてるけど、何から手をつけたらええかわからん」という方がいたら、お気軽にご相談ください。同じ業界で動いてきた人間として、できる範囲でお話できると思います。