電気工事の見積もり、けっこう奥が深いんです。「これくらいやろ」で出した数字が、後から大きな赤字を生むこともあれば、相場感を読み違えて他社に負けることも。
私は20年、電気工事会社で施工と管理の両方をやってきました。その中で「見積もりでやらかしたケース」も「見積もりで助かったケース」も、両方たくさん見てきています。
今回は、その経験から「見積もりで失敗しないために、これだけは押さえとけよ」という7つのポイントをまとめました。元請さんも、同業の協力会社さんも、独立直後の方も、ぜひ参考にしてください。
- 見積もり前のヒアリングで、絶対に聞いておくべき内容
- 追加費用が発生しがちな「あるあるパターン」と対策
- 諸経費の妥当な計上水準(材料費比?労務費比?)
- 図面精度と見積もり精度の関係
- 元請に提出する前に必ずチェックすべきポイント
POINT 1現場ヒアリングを「絶対に」省略しない
これは一番大事なやつ。図面だけ見て見積もりを作ると、ほぼ確実にどこかでズレが出ます。
図面に書いてないけど現場で必要なものって、めちゃくちゃ多いんですよ。たとえば既設の状態、搬入経路、駐車スペース、隣接建物の影響、騒音規制、夜間作業の可否。これらは図面じゃ絶対わかりません。
改修工事を見積もった時の話。図面では「天井裏から配線を通す」となってたんやけど、実際に天井裏を覗いたら大きな梁が何本も走ってて、配線が梁を避けて大幅に遠回りせなアカン。結局、図面にはなかった余分な露出配管の工事が発生して、当初見積もりの1.5倍かかった。
図面だけで判断したらアカンって、骨身に染みた現場でした。
必ず現地調査に行くか、最低でも詳しい写真と動画を送ってもらってから見積もる。これが鉄則です。
POINT 2「材料費」だけでなく「歩掛り」を必ず計算する
見積もりが甘くなる一番の原因は、労務費(電工費)の見積もりが雑だから。材料費はカタログ見れば誰でも計算できるけど、「この工事に何人工かかるか」を読めない人が多い。
歩掛り(人工/単位)を品目ごとに把握してれば、自動的に労務費が出てきます。例えば:
- VVF1.6-2C ケーブル:100mあたり 約1.3〜1.5人工
- CV5.5-3C ケーブル:100mあたり 約3.0〜3.4人工
- LED40W2灯直付:1台あたり 約0.25人工
- 住宅用14回路分電盤:1面あたり 約2.8〜3.2人工
これらは国土交通省「公共建築工事標準単価積算基準」に標準歩掛として公表されてます。民間工事もこれを基準にすると、見積もりがブレません。
POINT 3諸経費・現場経費を正しく計上する
意外とよく抜けるのが、ここ。「現場での消耗品」「運搬費」「諸経費」をきっちり計上しておかないと、利益がゴッソリ削られます。
私の目安としては:
- 運搬費:電工費の 7%(遠方・大物搬入があれば実費で別建て)
- 雑材料消耗品:材料費の 7%
- 現場雑費:(材料費+労務費)の 8%
- 諸経費(一般管理費):工事原価の 10〜15%(小規模ほど高め)
これは現場規模・工事内容で多少前後しますが、最低でもこのくらいは見ておかないと赤字になります。特に諸経費10%は下限ライン。会社の継続運営をちゃんと考えるなら、12〜15%は欲しいところです。
POINT 4追加費用が出るパターンを事前に潰しておく
「見積もり出した後に追加費用が発生する」のが、一番揉めます。これを未然に防ぐコツは、「見積もり範囲外の工事」を最初に明文化しておくこと。
典型的な「あるある追加」はこちら:
追加が発生しがちなパターン
- 既設配線の撤去・処分費
- はつり工事・コア抜き
- 足場・高所作業車
- 夜間・休日作業の割増
- 防火区画貫通の耐火処理
- 受電工事・電力会社申請
- 消防検査・自主検査
- 配電盤・分電盤の銘板・名札
見積書の「適用範囲」「除外項目」に、これらをはっきり書いておきましょう。「言った言わない」のトラブルを防げます。
POINT 5図面の精度と見積もり精度は連動する
「見積もり依頼が来たけど、図面がスカスカ」っていうケース、よくあります。こういう時、テキトーに見積もると痛い目を見るのはこっち。
図面が不十分なら、こちらから質問しましょう。具体的には:
- 主要機器のメーカー指定はあるか
- 配線方式(ケーブル工事/金属管工事/合成樹脂管工事)の指定
- 非常電源・予備電源の有無
- 特殊仕様(防爆・防滴・耐熱)の要否
- 試験・検査の範囲
- 引渡し書類の指定
ある精密な検品・選別作業を行う倉庫の電気工事で、図面に「LED投光器10台」としか書いてないやつが来たことがありました。図面通りに見積もって施工した後、引渡し前の照度測定で検品エリアが必要照度(JIS Z 9110 で 500lx 推奨)に届いてないことが判明。投光器の配光と天井高から逆算したら、最初から10台じゃ足らんかったんです。
結局、追加器具+配線で、当初見積もりの1.2倍。台数指定の図面でも、用途別の必要照度を確認して、自分で照度計算してから見積もるのが鉄則やと、その時学びました。
POINT 6「想定工期」を必ず見積もりに反映する
意外と見落としがちなのが、工期。短工期の現場は、それだけで人工が多くかかります。理由は:
- 人員を多く投入する必要がある(応援代)
- 段取り替えの回数が増える
- 工程が詰まると待ち時間も発生
- 残業・休日出勤が前提になる
「2週間でやってくれ」って言われて、本来1ヶ月かかる工事を見積もった時。普通の見積もり金額のままだと、確実に赤字です。
こういう時は、工期短縮割増(標準工期の場合の1.2〜1.4倍)を最初から計上しておく。見積もり段階で交渉したほうが、後から請求するより絶対揉めません。
POINT 7提出前のチェックリストを必ず通す
最後に、見積もりを元請に出す前のチェックリスト。これを必ず通してから提出してます。
提出前 最終チェック
- 計算ミス・転記ミスがないか(特に小計・合計)
- 数量に「ロス率」が入っているか(ケーブルなら 5〜10%)
- 消費税の計算は正しいか
- 適用範囲・除外項目が明記されているか
- 工期・支払条件が明記されているか
- 有効期限が書かれているか(30日が標準)
- 会社印・代表者印は押されているか
- 連絡先(電話・メール)は最新のものか
これだけで、見積もりの完成度が一気に上がります。「ちゃんとした会社が出した見積もり」って印象を与えられるかどうかは、この最終チェックで決まる、と言っても過言じゃないです。
まとめ:見積もりは「会社の顔」
見積もりって、ただの数字の集まりじゃなくて、会社の信頼度・実力が一発で伝わる「顔」なんですよ。
雑な見積もり出したら「この会社、ちゃんと現場わかってないな」って思われるし、しっかりした見積もり出したら「ここは任せられそうやな」って思ってもらえる。
今回紹介した7つのポイント、ぜひ参考にしてもらえたら嬉しいです。