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電線の許容電流とは?
選定の考え方を1級電気工事施工管理技士が解説

2026年4月公開 1級電気工事施工管理技士 監修 読了 約8分

電線の選定で最初にぶつかる壁、それが「許容電流」です。「許容電流って何のこと?」「カタログの数字をそのまま使ってええの?」みたいな疑問、現場の若手からよく聞かれます。

私は20年、電気工事の現場でケーブル選定を山ほどやってきました。住宅の小さな分電盤から、工場の大電流動力まで。その経験から「これだけ押さえとけば大丈夫」という考え方を、できるだけ噛み砕いて説明します。

この記事でわかること
  • 許容電流の意味と、なぜそれが決まっているのか
  • 許容電流を超えたら、実際に何が起きるのか
  • カタログ値をそのまま使ってはいけない理由
  • 電流減少係数・温度補正係数の使い方
  • 現場で実際に使える計算式と例題

CHAPTER 1許容電流って、結局なんなん?

ひとことで言うと、許容電流は「その電線に安全に流せる電流の上限」のことです。

電線に電流を流すと、電線の抵抗のせいで熱が発生します。電流が大きいほど熱も大きい。で、熱が大きすぎると絶縁体(被覆)が溶けて、最悪は火災や感電につながります。

そうならないように「これ以上流したらアカン」という上限を決めたもの。それが許容電流です。

絶縁体の種類で許容電流が変わる

許容電流は、電線の太さだけじゃなくて絶縁体の許容温度でも決まります。具体的には:

同じ太さでも、CVケーブルの方が許容電流が大きいんです。これは絶縁体の耐熱性が高いから、より高い温度まで使えるってこと。

住宅工事でVVFしか使ってない人が、初めて工場の動力工事に行って「同じ太さやのに、なんでCVの方が電流多く流せるんやろ?」って疑問に思ったらしいです。

それは絶縁体の差。VVFは60℃まで、CVは90℃まで耐えられるから、CVの方が容量大きい。これ知らんと、使い分けがちゃんとできません。

CHAPTER 2許容電流を超えたら、実際何が起きるのか

「許容電流を超えたら危ない」って言われても、ピンとこない人もいるかもしれません。実際、現場では何が起こるのか。

段階的に進む劣化

許容電流を超えても、いきなり燃えるわけじゃないんです。段階的に劣化していきます:

段階状態結果
軽微オーバー絶縁体が少し熱を持つ劣化が早まる(寿命短縮)
継続オーバー被覆が変色・硬化する絶縁性能が低下
大幅オーバー被覆が溶け始める絶縁破壊・短絡
極端オーバー導体が高温で溶断火災発生のリスク

怖いのが、「すぐには事故にならない」ところ。少しのオーバーなら、5年・10年経って初めて絶縁不良で事故が起きる、なんてこともあります。

注意:古い建物で「コンセントから煙が出た」「ブレーカーがしょっちゅう落ちる」といったトラブルは、配線の許容電流オーバーが原因のことが多いです。リフォーム時には電線の張り替えも検討しましょう。

CHAPTER 3カタログ値をそのまま使ってはいけない理由

ここが一番重要なポイント。カタログに載ってる許容電流は「理想的な条件」での値です。実際の現場では、この値より小さく見積もる必要があります。

カタログ値の前提条件

多くのメーカーカタログでは、許容電流は次の条件で示されています:

でも、実際の現場って:

こんな状況でカタログ値そのまま使ったら危険です。だから補正係数を掛けて、実態に合った許容電流を算出する必要がある。

CHAPTER 4電流減少係数の意味と使い方

電線管やダクトに複数本の電線を一緒に入れると、お互いの熱が逃げにくくなります。だから、本数が多いほど許容電流を下げて使う必要がある。これが電流減少係数です。

内線規程の電流減少係数

同一管内の電線本数減少係数使用例
3本以下0.70単相2線・3線、三相3線
4本0.63三相4線、単相3線+接地
5〜6本0.56複数回路の混在
7〜15本0.49多回路の幹線
16〜40本0.43大規模幹線
41〜60本0.39動力盤一次側
61本以上0.34受電盤・主幹

普通の住宅工事だと「3本以下(×0.70)」のケースが多い。動力工事や大規模ビルだと「4本」「5〜6本」も普通に出てきます。

気をつけるポイント

意外と知らない人が多いのが、「中性線・接地線も本数に含む」ってこと。たとえば「単相3線式」の100V/200V混在回路なら:

「3本以下やからギリ0.70で計算しとこ」が、実は4本で0.63にしないとアカンかった、みたいなケース。これ、実務でめっちゃあります。

CHAPTER 5温度補正係数の使い方

もう一つの補正係数が、温度補正係数。これは周囲温度が30℃を超える場所で使います。

温度補正係数(30℃基準)

周囲温度IV・VVF
(ビニル60℃)
CV・CVT
(XLPE 90℃)
30℃以下1.001.00
35℃0.910.96
40℃0.820.91
45℃0.710.87
50℃0.580.82
55℃0.410.76

注目してほしいのが、ビニル絶縁とXLPE絶縁で温度補正の効きが全然違うこと。50℃の高温環境だと、ビニルは0.58までガタ落ちするけど、XLPEは0.82で済む。

だから工場の高温エリアや、夏の太陽光発電現場なんかは、CVケーブルが選ばれるんです。

ある工場の屋根裏配線を見積もった時の話。夏場は屋根裏の温度が50℃を超えるエリアやのに、CVケーブルの温度補正係数(50℃で0.82倍)を入れ忘れて計算してしまって、後で許容電流が足りないことに気づいた。

結局、現場で1サイズ上のCVケーブルに変更して事なきを得たけど、補正係数の入れ忘れで電線サイズがズレるのは、設計段階で必ず押さえとくべきポイントやと、その時学びました。

CHAPTER 6実際の計算例:これで完璧

ここまでの内容をまとめて、実際の計算をやってみましょう。

実許容電流 = 表の許容電流 × 電流減少係数 × 温度補正係数

例題:IV5.5mm² を電線管に6本収容、周囲40℃

まず必要な数値を集めます:

計算:

49A × 0.56 × 0.82 ≒ 22A

カタログ値49Aだったのが、実際の現場条件では22Aまでしか流せないってことになります。半分以下!

「カタログ値だけ見て電線選んだら、実は容量足りない」っていう失敗、これでイメージ湧いたんちゃうかな。

CHAPTER 7連続負荷の考慮も忘れずに

もう一つ、見落としがちなのが「連続負荷」の扱い。電技解釈第148条で、3時間以上連続して使用する負荷については、負荷電流の1.25倍以上のブレーカ容量を選ぶことになってます。

これも電線選定に影響します。例えば:

普通の電灯コンセント回路は連続負荷じゃないんで、これは意識しなくてOK。でも業務用エアコン、サーバー機器、生産ラインのモーターみたいに3時間以上動きっぱなしの負荷は、必ずこれを考慮してください。

まとめ:電線選定は「保険」みたいなもん

電線選定って、ぴったりサイズで攻めようとすると、必ずどこかで火傷します。だから多少余裕を持って、ワンランク上のサイズを選ぶのが賢いやり方。

「この電線、25年使うんやから」って考えたら、最初に少しサイズアップしとくくらいで丁度ええんちゃうかな、と思います。

私の方でも電線選定で迷う案件のご相談は大歓迎です。1級電気工事施工管理技士・第一種電気工事士として、図面の精査からアドバイスまでお手伝いできます。

電線選定でお困りの際は、お気軽にご相談ください

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